作者はムツゴロウこと畑正憲さん。それにしても古い作品です。角川文庫の初版が1973年。著者がこの作品を書いたのが1967年、金の星社からジュブナイル版の《ゼロの怪物ヌル》が出版されたのが1969年なのだそうですから。なんていうのかな、雰囲気が旧作のゴジラシリーズを見ているような感じです。
海から来たチフス=大島熱とは何か?無細胞生物ヌルはどう係わり合いがあるのか?を解き明かしていくプロセスが本編の縦軸。
横軸が主人公の木谷健君の成長のドラマ化というとそうではありません。ケン坊はこのオハナシの中では成長しません。青いガキのまんまです。そこがいいんですけどね。
横軸は容赦なく続く怪奇現象!に対峙する少年のワクワクとドキドキです。
カバー折り返しの紹介文の一部を引いてみましょう。
大島近海をとつぜん襲ったぶきみな異変。まぼろしの魚や無細胞生物“ヌル”の出現に大混乱が発生した!
ね?ワクワクしてきませんか?それとも、わたしだけですかね?
読み始めてみるとワクワクはドキドキになって中学三年生の主人公とワク・ドキを共有したまま(つまりはまるっきり感情移入しちゃった状態で)、少年ドラマシリーズ的な爽やかな読後感に至る。
それともこれは昭和40年代に子供だった者にのみ固有の症状なんでしょうか?
そうであって欲しくはないんですが。
紹介文はこう続いています。
あやしく静まりかえり、太古からの謎を秘めて、いっこうに秘密の扉をひらこうとしない海のS・F痛快小説。
これこれ!これこそ、海洋SFってぇもんですよ!SFなんかよりも痛快小説ってとこに重きをおいてしまいます。
こうなってくるとますます同じ作者の《深海艇F7号の冒険》を読みたいなぁ。
ちなみに挿絵と表紙は長新太さん。
なんともいえず、いいんだこのタッチが。
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